「石山勇人の連載ラーメンコラム」

第1回 第2回 第3回

 

第3回 ラーメン界の主原料「豚骨」

 豚骨と聞くと白濁スープを思い浮かべる人が多いだろう。しかし豚骨は一般的に醤油ラーメン等にも使用され、煮立たせるか否かによりスープの濁り具合を調節する。札幌の「味噌ラーメン」や津軽の「煮干中華そば」にももちろん使用され、ラーメン界の万能原料として重宝されている。
ゴトゴトと沸きかえるように炊くのが九州系で、崩れるほど煮込まれた骨からは大量のコラーゲンが流出、それがゼラチン質に変化し乳化する。そして豚骨の旨み成分イノシン酸と醤油ダレに含まれるグルタミン酸が味の相乗効果を生み出し、あの豚骨ラーメン独特の強烈なコクを生み出すのである。九州系の豚骨ラーメンはまた、食べる仕組みも醤油のそれとは異なってくる。博多ラーメンを例にとって見るとまず、麺の違いがある。極細でのび易い博多のラーメンは普通のラーメンに対して少量につくられており、それで足りない方には「替え玉」という麺を追加できるシステムを用意している。博多ラーメンの発展した土地、長浜漁港の漁師らが作業の合間をぬって短時間で食べられるよう工夫された麺だといえる。
 今、ラーメン界では様々なラーメンが表に出ては隠れていく状況にある。そんな中でもやはり、多くの店がスープの主軸におくのは「豚骨」であることに間違いはない。牛骨や鶏・魚介等、多様なスープ原料が台頭してくる昨今ではあるが、まだまだ豚骨の首位独走態勢は変わらなそうだ。

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文 石山 勇人


 

第2回 文明開化によるラーメンの伝来

 文明開化と共に大陸から伝わった麺料理「ラーメン」。今や日本の大衆食としてしっかり馴染んだこの人気メニューを、歴史を追って紐解いてみよう。
1858年(安政5年)通商条約により横浜・函館など日本各地の港が開港すると瞬く間に外国の文化が流れ込んだ。この一大変革に後押しされ、日本の食は魚介菜食中心の食生活から次第に肉食への関心が高まる。とは言うものの、当時のラーメンといえば塩ラーメン(ラーメンは本来塩味)。獣臭さがダイレクトに伝わる塩スープは当時の民衆には受け入れがたかったかもしれない。そんな中、1910年(明治43年)浅草に日本のラーメン店第一号とされる「来々軒」が誕生する。南京街(現在の横浜中華街)からスカウトした商才あふれる中国人の料理人は、日本古来より伝わる「醤油」たる調味料に目をつけ日本初の醤油ラーメンを完成させる。また、これまでのラーメンは具のないものであったり、のせてもネギといった簡素なものであったのだが、現在のラーメンに通じるチャーシュー・メンマ・刻みネギの御三家が顔をそろえたのもこの時代とされる。
もともと「そば・うどん」など麺料理が定着していた我が国において、異文化といえども「ラーメン」が皆に受け入れるまでそう時間はかからなかった。そして戦後引き揚げ者による屋台の登場、更に食材の調達しやすいこのB級グルメは、創造力豊かな国民性に便乗し日本を代表する食文化といわれるまでに成長した。

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文 石山 勇人


 

第1回 津軽に根付く「煮干」味

 「郷土料理」。津軽においてこの言葉から思い起こすのは「じゃっぱ汁」や「ニシン漬け」等、祖父母の同居する家庭では当たり前のように並べられる料理だろう。そして一昔もしくは二年前までこれらの料理と共に津軽の人々に親しまれる「津軽そば」という大衆食があったのをご存知だろうか。焼干風味漂う醤油ベースの出汁に、大豆のすりおろし汁でつなぐ特有の麺を合わせる。シンプルながら輪郭の整ったすっきりとした味わいは当時の民衆に広く親しまれたものだという。しかしその製造工程の繁雑さや、戦後における食料事情の好転により次第に影を潜めて行った。
 こうして「幻の津軽そば」ともネーミングされるに至った津軽そばであるが、その特徴を色濃く受け継ぎそして発展し現在に至る食文化がある。それが津軽に根付く「中華そば」(煮干ラーメン)である。津軽地方において北から南まで広く勢力を振るい、他地域との差別化された味は明らかに津軽の文化を主張する。普通(主に関東方面)「昔懐かしい支那そば」といえば豚骨・鶏ガラ主体のあっさりスープ、魚介を加えるならばカツオなどの節系の味を連想させるものであるが、津軽において「支那そば」を思い浮かべるのはやはり焼干・煮干主体のあっさり味。老舗に至っては豚骨などの動物系食材を使用しない店まである。
 昭和初期、青森県の主産業として定着していたイワシ漁。この地場産業をうまく反映し、現在最も時流に沿う郷土料理がこの「煮干ラーメン」なのでは。

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文 石山 勇人

〜石山勇人プロフィール〜
●若年ラーメニスト
●石山勇人(いしやまはやと)(1980年生まれ)
●青森県平賀町在住
高校時代すでに味噌ラーメン研究家を名乗り、進学に伴い上京。國學院大學公認サークル「ラーメン研究会」を立ち上げる。大学四年間その実食数1000杯は下らない。「TVチャンピオン」ラーメン王選手権出場、人気TV番組「ドシロウト」にラーメンマニアでゲスト出演、「じゃらん」、「東京1週間」掲載等、メディア進出多数。

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